脳機能研究グループ (阪大) 

柳田研では、阪大グループと総務省(旧郵政省)グループの2ケ所において脳機能研究を行なっています。総務省グループの研究内容は総務省通信総合研究所関西支所内「Yanagida Brain Dynamism Laboratory」のホームページにて公開しています。こちらを御覧ください。

メンバー
   研究課題
精山明敏 光を用いた生体機能計測
喜多村祐里 ヒト脳機能イメージングを用いた「前頭葉と脳記憶研究」

こころの障害を脳機能イメージングで探る

田谷文彦 (阪大健康体育部・豊中) 視覚野の情報処理ネットワークにおけるモデル解析
共同研究および研究協力者   
藤崎久雄  (ニコン) ニューロン活動の高時間空間分解能計測と実時間イメージング
小橋昌司 (姫工大情報工学科) 医用画像解析によるヒト脳機能研究
大槻美佳(国立循環器病センター脳血管内科) 高次神経機能障害学,失語症研究
速形俊昭(大阪大学医学部附属病院救命救急センター) 中枢神経損傷後の機能回復機構の解明,治療法の開発
医療法人仁寿会石川病院 fMRIの撮像および画像解析に関する技術的支援と新しい撮像法の開発に関する研究
医療法人大道会ボバース記念病院 リハビリテーション医学における脳機能イメージングの実践的応用に関する研究
光を用いた生体機能計測
生体を透過した光は、生化学的・生理学的および構造学的なたくさんの情報を含んでいる。光は波長・強度・偏光・時間軸への展開が可能で、生体を透過した光に含まれる情報を分離・抽出解析することにより生体内で起こっている様々な現象をリアルタイムに追跡することができる。現在、研究対象にヒトおよび実験動物を用い、可視から近赤外(400〜900nm)までの波長の光を利用した生体機能計測装置の開発と応用により、生体内でおこっている種々の生命現象の解明を目指している。

←ヒト脳機能計測装置の開発と応用

リハビリテーション医学における脳機能イメージングの実践的応用
図1 近赤外光トポグラフィーによる低拘束性脳機能計測を用いて,中枢神経系機能障害に対するリハビリテーションの有用性を確かめる
図2 パルス磁場による単発経頭蓋的磁気刺激(TMS; transcranial magnetic stimulation)を用いて,脳卒中後運動不全麻痺患者の機能予後を評価する。
図3 機能的磁気共鳴画像(fMRI; functional magnetic resonance image、上図)を用いた手指随意運動機能賦活検査により,リハビリテーション経過途中における中枢神経系ネットワークの再構築過程と考えられる前頭極の顕著な活動増加がみとめられた(左図)。
<参考文献>(投稿中につき近々更新予定)

Yuri T. Kitamura, Kisou Kubota, Yujiro Seike, Mikio Imabayashi, Ichiro Miyai, Tsunehiko Suzuki and Toshio Yanagida; Motor-evoked potentials following transcranial magnetic stimulation during recovery course after a stroke. (in press) Elsevier Science ICS, 2001

近赤外光トポグラフィーの可能性を追求する 
図4 近赤外光計測の原理

大脳皮質表面(頭皮上のプローブ装着部位より2〜3センチ深さ)の組織血流量の変化を鋭敏に捉える近赤外光計測の原理を応用して,多チャンネル同時計測による光トポグラフィー装置が開発された。

図5 低拘束性脳機能計測の実現

計測中の姿勢や運動に対する制限がほとんど無く,電磁場による影響も全く受けないため,あらゆるタスク(刺激課題)の適用が可能になった。

図6 高時間分解能計測   脳活動にともなうhemodynamic responseの記録としては十分なサブ秒(~100 ms)計測の結果を二次元分布図(トポグラフィー)で表現したもの。
図7 fMRIやEEG, MEGなどとの相補的活用正確な位置情報や神経活動の電気的興奮との関係を明確に示す必要があると考えられる。
<参考文献>

Yuri T. Kitamura, Syoji Kobashi, Yutaka Hata, Mika Otsuki, Hiroaki Naritomi and Toshio Yanagida; Dynamic brain activation during improvement in a sequential motor performance: An NIRS/I study. NeuroImage 13 (6) Part 2, S-695, 2001

Event-related fMRIによる高次神経機能の動的解析 

 失語症研究および病巣研究により,かなり判っている言語機能の要素的局在をもとに,それらの統合的処理過程での信号の遷移を脳機能イメージングによって明らかにしようと試みている。

図8 異なる単語想起課題遂行中の賦活部位の違い

 言語想起のストラテジーの違いによる活動部位の違いを示していると考えられ,今後は脳における情報処理の流れに対応する活動の遷移を捉え,そのメカニズムに迫ることができればいい。

脳細胞の活動と形態変化の高速高分解能計測

脳に関する観察・計測は様々なレベルで行われている。医療の現場でのX線CT,MRI,PET等の画像診断装置による生きている脳の内部観察,基礎研究における電子顕微鏡や共焦点レーザー走査顕微鏡による切片試料の高分解能観察,神経細胞の活動の電気生理学的な計測などの結果を統合して脳の仕組みと働きに関する理解が進んでいる。本研究では,三次元的に複雑な構造の生物試料の深部での生理学的事象を高速観察できるビデオレート2光子顕微鏡を構築し,生きている脳内の神経細胞および近傍の血流を安全に高分解能で動態観察し,かつ活動の計測を同時に行う方法を確立し,これによって脳内の細胞の形態と活動との関係を明らかにすることを目的とする。これらの研究を通して得られる知識が脳の研究を推進させ,ひいては,アルツハイマー病などの脳の病気の解明が期待される。

<参考文献>

  G.Y. Fan, H. Fujisaki, A. Miyawaki, R.-K. Tsay, R. Y. Tsien, and M. H.Ellisman: Video-rate scanning two-photon excitation fluorescence microscopy and ratio imaging with cameleons. Biophys. J. 76, 2412-2420 (1999).

空間的注意制御に関する基礎過程の解明

人間は視空間の一部だけを選択して,その位置に関してより詳細な分析を行なうことができる.すなわち,ある位置に対して注意を向けることができる.ほとんどの場合,人間は自分にとって必要な位置に注意を向けることができるが,状況によっては不必要な位置に注意がひかれてしまうことによって,行動に支障がでてしまうことがある.そのような注意制御に関わる脳活動を明らかにし,いかにして効率の良い注意制御が可能になるかを示していく

近赤外光を用いた脳機能計測装置の開発と応用

生体に対して透過性の高い近赤外光をヒト頭部に入射し、透過・散乱されてきた光を検出・解析することにより、脳内の活動状態を測定することができる。現在までに実用化されているのは、血中に存在するヘモグロビンの光吸収特性を利用し、脳活動にともなう血液中の酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの濃度変化を検出するものである。この光計測は、その被験者への低い拘束性などから注目され現在臨床面などにも応用が進んでいる。しかし、ここで観察している血行動態の変化は神経活動に不随する二次的な信号で時間的に遅い反応であるため、神経活動のダイナミクスの情報は得にくいという面がある。そこで現在は、この装置を用いた測定の他に、神経活動に由来する細胞膜の構造変化を光の散乱変化として計測可能となる装置を開発することを目指した研究を行っている。